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信頼お母さんが自分の部屋に入ってみると、まだリアズとシャラがビデオゲームで遊んでいました。二人とも気まずそうに振り向いてお母さんを見ました。
「ゲームは30分だけと約束したのに、宿題はどうなっているのよ! もう1時間以上にもなるのよ!二人とも約束したでしょ!」 「ごめん!お母さん!シャラに勝ちたいんだ、おれ。負けを取り戻したいんだ!」とリアズが言いわけしました。 「私の方がリアズよりも勝ちたいの!女の子だって勝てるってことを見せたいのよ!」とシャラが続けました。 「二人ともそんな考えだったらゲームは終らないんじゃない?それに、勝つことよりもお互いに手伝って楽しむべきじゃないの!」と言って、お母さんはため息をつきました。 「とにかく今は勝つことよりも、二人ともお母さんに信頼されるようにすべきよ!」とお母さんがきびしく言いました。ちょうどそのときアスマ、モナ、アニサが部屋に入って来ました。自分たちが叱られていないので,ホッとしました。 「しんるいって、誰のこと?」と幼いアニサがきょとんとして、たずねました。 「親類なんて誰も言ってないよ、アニサ。今、おれたちゲームのことで忙しいんだ。」とリアズが気まずさをごまかすように笑いとばしました。リアズがいつものように笑ってごまかす様子に、お母さんの外は、みんな笑ってしまいました。アニサは気まずくなっているリアズをみんなで慰めて笑っているのだと思いました。 「しんるいではなくて信頼。信頼は約束を守ると信用されることなのよ。」とモナが説明しました。
「自分が言ったことは必ずする人だと、他の人がその人を信じるってことかな。」とアスマがつけ加えました。さらにお母さんが続けました。 「信頼される前に、他の美徳が必要なのよ。それは、どんな美徳かしら?」 「いつも本当のことを言うこと。」とシャラが跳びあがって答えました。シャラはなぞ解きのように聞かれることの方が、叱られるのよりずっと楽しいと思いました。 みんなに気を取られている間、お母さんが自分たちのことを忘れてくれるのを願いながら、リアズはそっとゲームを片づけました。 「正直も大切だと思うわ。」とモナがつけ加えました。 「本当のことを知っている人が、正直でないこともあるわ。黙っていれば、うそはついていないけども、間違ったことを本当だと他の人を信じさせることもできるでしょ。でもそれだと、その人を信頼できないわね。」 アスマが考えながら続けました。 「ほかの人が見ても見ていなくても、必ず正しいことをする人だと信じられるのが信頼だと思うよ。誰でも正しい判断をする人を信頼するだろ。」 すると突然シャラが叫びました。 「思い出した!バハイ子どもクラスで習ったバハオラの言葉にあったわ。 繁栄の中にあっては寛大であれ。逆境に際しては感謝するものであれ。隣人が汝に信頼を置くにふさわしいものであれ。明るく、親しみのある顔をもって隣人を 見よ。 これでいい?お母さん?」 「何でもたくさんあるときは人と分けあって、少ししかないときでも喜ぶ人になりなさい。それから、いつも明るく親しみやすくして、まわりの人から信頼されるようになりなさいっていうことかな?」とリアズがつけ加えて言いました。
「みんなよくできたわ!お互いに信頼があれば、どんなにすばらしい世の中になるか考えてみて!」と、お母さんがさらに続けました。 「バハオラの言葉に 信頼は人びとを安らぎと安全に導く偉大な玄関の扉となる。 とあるのよ。アスマ、説明できる?」 「えーと、信頼はみんなの心配をなくして、危ないことがないところへ連れて行ってくれるドアのようなもの。。。。で、いいかな。つまり、みんなが信頼すれば世界全体が平和で幸福になるということだろ。」 「その通り、アスマ。」とお母さんが言って、 「みんなが信頼すれば、ほかに何が変わってくるかしら?」と聞きました。 「広告で言えば、商品のありのままを伝えるようになると思う。」とリアズが言いました。 「みんなが信頼すれば、盗むようなこともなくなって、どんなに安全になることか。どこにおもちゃとか自転車を置いても安心できるわ。」とシャラが言いました。 「世界中に信頼があれば、戦争だってなくなるわ!」とモナが続けました。 みんなお母さんの後について、夕食の食卓の準備を手伝いました。お母さんがオーヴンからマカロニグラタンを取り出しながらさらに聞きました。 「他に信頼について何か知っている話がある?」 「バブについてなら知っているよ。」と言ってアスマが続けました。 「バブは商人でした。あるとき、バブは頼まれた品物を、それが一番高く売れるときに売ることができなかったんだ。でもその品物を預けた人には自分の責任だからと言って、高いときと同じだけ払ってあげたんだ。」
「すごい!」とリアズが感心して続けました。 「今どき、そんなビジネスマンなんかいるかい?狂っていると言われるぞ。」 「だけど、そんな人がいたらすばらしいじゃないか。」とアスマが言いました。ちょうどそのとき、お父さんが仕事から帰ってきました。子どもたちは手を洗って夕食の食卓につきました。お父さんが、 「何を話してたんだい?」と子どもたちに聞きました。アニサが誇らしげに答えました。
「しんらいは、言ったことをする人を、ほかの人が信じることだと習ったのよ。」みんなアニサに拍手しました。 「誰か、ほかに信頼についてのお話を知っている?」とお母さんが聞きました。子どもたちは顔を見合わせました。モナが答えました。 「女王様と花の種の話があるわ。」 「わあー。女王様とか花のお話なら大好き。モモ、話して!」と幼いアニサが喜んで言いました。モナも喜んで話し始めました。 「むかしむかし、ある国に、子どもがいない女王様がいました。もう若くなかったので、次に誰がこの国の王になるのか心配していました。ある日、いいことを思いつきました。花の種を芽が出ないように火で熱を通して、それを入れた袋をいくつも用意しました。翌日、その国の少年少女たちに女王が決めた日にお城に集まるよう言いました。その日に集まった少年少女たちにその袋を配りました。そして、何も知らない少年少女たちに、袋の中の花の種を植えて、一カ月後にそれを持ってお城に戻ってくるよう言いました。そのときに、それを見て次の王とか女王を決めると言いました。みんな、自分が一番美しい花を咲かせたいと思いました。もちろん、誰もそうならなかったので、がっかりしました。だけど、なんとその日、みんな、美しく咲いた花を持ってきたのでした。」 「わー、詐欺だ!」とシャラが叫ぶと、「インチキ!ずるい!」とリアズが続けました。
「女王はその花を見て、悲しそうに辺りを見まわしました。この国には信頼できる正直者はいないのかと嘆きました。そのとき、一人の少年がやってくるのが目にとまりました。少年は目に涙を浮かべて、悲しそうに土の入った植木鉢を手にしていました。女王は少年のところに行って、花はどうしたのかとたずねました。少年は残念そうに答えました。 『申し訳ありません、女王様、いろいろやってみましたが、花が咲くどころか芽も出ませんでした。』少年の目からは涙がこぼれ落ちました。女王は少年を抱きしめてみんなに言いました。 『彼こそが次の王です。彼は正直と真実でこの国を治めるでしょう。彼は信頼できます。』少年は王となって、その国は平和でした。」 「やったー!」と家族みんなが叫んで拍手しました。 「いいお話、ありがとう、モモ!」と言って、アニサが立ち上がってモナを抱きしめました。 「少年が次の王に選ばれたのはなぜなの?」とお母さんがたずねました。
「当りまえだよ!本当のことを言ったんだから!」とリアズが言いました。 「そうよ、でも、簡単なようだけど、リアズだったらどうしたと思う?私たちも正直に言って信頼されるようになるかしら?」とモナが問いかけました。 「これからはみんなで信頼されるようにしましょう!」とお母さんが言いました。 「アニサ、信頼されないとどうなるのか、あのお話をしたらどうだい?ほら、いつかお父さんがアニサに聞かせた羊かいの少年のお話があっただろ?」とお父さんが言いました。 「そうね!みんな聞いて!そのお話をするから。」と言ってアニサが話し始めました。 「むかし、あるところに一人の羊かいの男の子がいました。ある日、男の子は羊の番をするのが退屈になってきました。羊が草を食べるのを見ているのが面白くなかったんでしょう。そこで、村の人たちを驚かそうと思って、突然大声を上げました。『たすけて!たすけて!おおかみがぼくの羊を食べちゃうよ!』 」 アニサの大声にリアズは耳をふさいで言いました。 「アニサ、そんなに大声を出さなくても、叫んでいるのは分かるよ!」アニサは続けました。 「村の人たちみんなが、男の子と羊をたすけに走ってやってきました。男の子はまんまとだまされた村の人たちを見て笑いころげました。」 「リアズがやりそうなことね。」とシャラが笑って言うと、リアズはシャラにアッカンベーをしました。 「まだ終わっていないのよ!」とアニサが二人をにらんで続けました。 「村の人たちが怒って、男の子はあやまりました。でも、次の日も、男の子は退屈になって約束を破って同じことをしました。今度は村の人たちは本当に怒りました。そのまた次の日に、今度こそ本当におおかみがやってきました。男の子はとても怖くなって大声で助けを呼びました。『たすけて!たすけて!おおかみが羊を食べちゃうよ!今度は本当に本当なんだよ!』 でも誰もたすけにやってきません。みんなまただまされると思いました。誰も男の子を信じませんでした。」
お母さんは「よくできたね!アニサ!」とほめて、「これで分かったでしょ。村人が男の子を信じなかったのは、なぜ?」と聞きました。 「男の子が本当のことを言わないので、信頼できなかったから。」とアニサが得意そうに答えました。 「人から信じられるには、どうしたらいいか他にもあっただろう?」とお父さんが聞きました。 「それは、シャラとリアズが答えたら?」とお母さんが言いました。二人は顔を見合わせました。お母さんがまだ二人に怒っているのを知って、それを忘れるように願いました。 「約束は必ず守らなければいけない。言ったことは必ずすること。」とリアズが始めると、
そのつづきはシャラが、 「つまり、ゲームは30分で終わらすべきだったのよね。」とつけ加えました。 「だけど、お母さんとお父さんは日曜日におれたちを公園へ連れて行く約束だったのに、あれはどうしたんだよ!」とリアズが不服そうに言いました。 「あのときは雨だったでしょ。雷と大雨のなか公園で遊びたかったなんて!」とモナがきびしく注意しました。お母さんがそのことを説明しました。 「そうね、お父さんもお母さんもわからない未来のことは約束すべきじゃなかったようね。イスラム教徒のようにアラビア語で神の意志という意味の『インシャラ』と言うべきだったわね。でも、本当に日曜日は公園に行くつもりだったのよ。」 「おれたちも30分だけゲームをするのを、インシャラと言えばよかったんだよな!シャラ!」と言ってリアズが笑いました。 「何(なに)言(い)ってるの、リアズ、自分がわからないことは神の意志に任(まか)せるしかないけど、あんたたち二人がゲームをするのは神の意志ではないでしょ。」とモナが叱りました。
「はい、はい、分かった,分かった、冗談(じょうだん)だよ、モナ!」とリアズが言いました。 「まあ、まあ、落(お)ち着(つ)いて。ところで、みんな信頼という意味が本当によく分かってきたようね。これからもっと信頼されるようがんばりましょう。」とお母さんが励(はげ)ましました。 「さあ、みんなで夕食(ゆうしょく)の後片づ(あとかた )けをしよう。その後(あと)で、みんなでゲームをしたらどうだろう?」とお父さんが提案(ていあん)しました。 「でも、シャラとリアズは宿題を終わらせなくちゃ。その間(あいだ)、私たちだけでゲームをするようになるわね。」お母さんが残念(ざんねん)そうに言いました。 「そんなの、いやだ!」とシャラとリアズが叫びました。 「仕方ないだろ。宿題をすませて信頼を取(と)り戻(もど)さなくちゃ。」とアスマが笑って言いました。 「急(いそ)いで宿題を終わらせれば、少しはゲームができるかも。」とお母さんが言いました。二人は急いで宿題にとりかかり、他の子たちは夕食の後(あと)片(かた)づけを手伝(てつだ)いました。その後、みんなでゲームを楽(たの)しみました。 |